ニュース

2025.06.05

ロイヤル・バレエ『ロミオとジュリエット』インタビュー情報

●チャコット

『ロミオとジュリエット』でティボルトを熱演した平野亮一に聞く「思春期真っ只中で、負けというものを知らない青年です」英国ロイヤル・バレエ&オペラ in シネマ
https://www.chacott-jp.com/news/worldreport/tokyo/detail039477.html

 

●FNNプライムオンライン

スクリーンで蘇る“悲劇と愛の軌跡” ロイヤル・バレエ『ロミオとジュリエット』ジュリエット役・金子扶生さんとティボルト役・平野亮一さんにインタビュー
https://www.fnn.jp/articles/-/874857?display=full

 

●バレエチャンネル

①英国ロイヤル・バレエ「ロミオとジュリエット」ワディム・ムンタギロフ インタビュー~ジュリエットに出会った瞬間、ロミオの脳はショートする
https://balletchannel.jp/45869

②英国ロイヤル・バレエ「ロミオとジュリエット」平野亮一インタビュー~ティボルトはきっと“次男”だと思う
https://balletchannel.jp/45905

2025.06.04

ロミオ役、ワディム・ムンタギロフさん特別インタビュー

インタビュー

「ロミオ役はとても僕に似ています。でも少しずつ大人になっていく僕と共に、変わってきています」

ロイヤル・バレエ『ロミオとジュリエット』シネマでロミオ役を演じたワディム・ムンタギロフ。理想的な貴公子そのものであるワディムですが、普通の若い青年であるロミオ役は特別な思い入れがあるとのことです。自分自身に近い役であるロミオから、最近はもっと複雑な役にも挑戦している彼が、どのように深化し成長して行っているのか、語っていただきました。

 
―ワディムさんは若い時からロミオ役を演じてこられてきました。それから年月を経て、あなたのロミオの演じ方は変わってきましたか?

ワディム:「ロミオ役はとても自然に演じられる役です。もう少し年を取れば、少し演じるのが大変になってくるかもしれません。いくつかのステップは今よりも難しく大変だと感じてくると思います。今の僕は、まだ早く走ったり、ふざけたりして楽しむことができています。まだロミオが僕に似合う役であるのは嬉しいことです。
今は自分のキャリアを通して、もっとドラマティックな役を演じる経験を重ねることができるようになりました。『マノン』のデ・グリュー、『マイヤーリング(うたかたの恋)』のルドルフ皇太子、ウィールドン『冬物語』のレオンティスなどです。これらのバレエ作品を通じて、僕はもう少し深い痛みを感じられるようになりました。」

ここ数年の間に、3幕で僕の演じるロミオは少し成熟してきたのではと思います。前よりも痛みや悲しみをもっと感じるようになっているかもしれません。ジュリエットが亡くなってしまったと思いこんだ時には、それまでのとても若い青年よりも大人になった姿を見せていると思います。

 
―ロミオはあなた自身に近いとおっしゃっていましたね。あなたに似ている役は他にはありますか?

ワディム:「はい、実際ロミオは僕に似ている人物です。僕はとても爆発的なエネルギーを持っていて、思い通りにならないと怒りを感じてしまって、なんとか思い通りにしようとしていました。でも今僕は少し大人になったと思うので、もっと落ち着いたと思います。今の僕は何かを感じて、例えば怒りを感じていても、すぐにそれを表に出さないで、その怒りを抑えようとすると思います。だから少しずつ僕は変わっています。『白鳥の湖』のジークフリート王子は僕が今まで最も多く演じた役だと思いますが、この役も僕自身に近いところがいつもあると感じています。 またアシュトンの『田園の出来事』のベリャーエフも僕に近いと思います。田舎に住んでいて、緩やかなシャツを着て、自然の中で楽しんでいるような人です。」

 
―ワディムさんは、まもなく『オネーギン』のタイトルロールを初めて演じることになっていますね。ロンドンでは、あなたのオネーギン役への期待でファンは持ちきりだそうです。これもまた、今まで演じてきた役とは違う、成熟した役ですね。

ワディム:「今シーズンの大きな役デビューは、オネーギンだけです。これから2週間後に初めて演じることになっていますが、これは僕にとっても大きな挑戦です。新しい役を演じるにあたって最初の2,3週間のリハーサルの間はなかなか大変です。役がまだ体に入っていないのでうまく行かないことが大きくて、ちょっと動揺したり、怒りを感じてしまったりすることもあります。まだまだ発展させなければならないこともあって、僕はちょっと苛立ちを感じてしまうこともあります。スタジオで稽古をしていて、まだいい感じには見えなかったりうまく行かない時にはストレスを感じたり不安になったりもします。この役は2週間ほどリハーサルを重ねてきており、ゆっくり少しずつ改善点を修正していて発展させていっています。もう少しこの役を理解することができるようになりましたし、昨日はリード・アンダーソンとの最初のリハーサルがありました。それはとても集中した、とても良いリハーサルでたくさんの知識を得ることができて、良い成果を出すことができました。あと2週間リハーサルを重ねて本番に臨みますが、とても楽しみです。

この役が楽しみなのは、今まで僕が演じてきた役とかなり違うからです。この役はあまりソロを踊らなくて、代わりにパートナーリングがとても多いです。大体バレエだとソロとパ・ド・ドゥが半々くらいでたくさん踊ってパートナーリングもたくさんするわけですが、『オネーギン』では、パートナーリングに集中します。また自分と全く違ったタイプの人間、傲慢で自己愛が強い人を演じなければならなくて、僕にはそういう部分は全然ないので、大きな挑戦です。でも僕はこのプロセスを楽しんでいて、僕自身の中からそのような要素を頑張って見つけ出そうとしています。」

 
―いつかワディムさんのオネーギンを拝見したいですね!きっと素晴らしいはずです。
さて、ワディムさんは今年の夏も日本で踊ってくださいます。日本で踊ることは楽しみにしてくださっていると思いますが。

ワディム:「僕を含めた多くのバレエダンサーは、夏はもっと休んで、あまり舞台の仕事をしたくないと思っているんです。でも日本で踊ってほしいというオファーがあれば、もちろん、喜んで引き受けます。毎回日本ではとても幸せな思いをしています。でも舞台の準備には入念に準備をしなければならないのがちょっと大変です。僕は両親とは夏にしか会えないので、毎年会うことにしています。それと同時に、日本の舞台に立つ準備を進め、身体をしっかり作らなければなりません。シーズンの前に怪我をしてしまったので、足を痛めないように良い床で踊らなければならず、スタジオにこもらなければなりません。父もプリンシパル・ダンサーだったので、僕たちは一緒に稽古をすることができて、良い機会になっています。父も僕と一緒に稽古できることを喜んでいます。夏は父が僕にバレエクラスを教えてくれて、ソロやパ・ド・ドゥも一緒に練習するのが通例となっています。

もちろん日本で踊ることはとても楽しみです!日本のお客さまはバレエが大好きなことをよく知っています。彼らはバレエに対してとても敬意を持ってくださっているし、僕たちを舞台の上で観ることを楽しみにしていることを実感します。バレエダンサーのキャリアが短くて、大変なこともきちんと理解してくださっていて、華やかな踊りを見せることは奇跡的なことも知っています。ダンサーがキャリアを重ねていく中で、成熟してきて、新しい役に挑戦していき変化していくことも理解してくださっています。本当に日本の皆さんの愛と応援を感じています。」

 
―今年の夏、日本ではどんなことをしたいと思っていますか?

ワディム:「日本でやりたいことはたくさんあるのですが、なかなか十分な時間がありません。僕は自然が大好きなので、日本の自然をもっと見たいと思っています。去年の夏は箱根で2,3日過ごすことができました。とても美しくて、リラックスできて、素晴らしい温泉にも入ることができました。僕の心や体にとても良いことができたと思いました。今年の夏もオフに何かできるといいなと思っています。自然に触れて自分を充電できるような、昨年と同じようなことができればいいですね。」

 
―日本の観客は、スクリーンでのあなたのロミオ役の素晴らしい演技にきっと魅せられるはずです。

ワディム「ありがとうございます。映画館でみなさんに僕のロミオを観てもらえると嬉しいです!」

2025.03.24

オペラ『ホフマン物語』見どころをご紹介します

コラム

石川 了(音楽・映画・舞踊ナビゲーター)

 フランスの作曲家ジャック・オッフェンバックの幻想オペラ『ホフマン物語』は、“オペレッタの王様”と称されたオッフェンバックがパリの音楽界から“オペラ作家”として認められたいとの想いで取り組んだ、彼にとって最後となった作品だ。未完のままオッフェンバックは61歳でこの世を去り、友人の作曲家エルネスト・ギロー(『カルメン』の台詞をレチタティーヴォに作曲した人)が補筆完成して、1881年2月10日にパリのオペラ・コミック座で初演された。

 その後、上演した劇場の火災などで初演の楽譜や資料が散逸し、現在まで決定版がないまま複数のバージョンの楽譜が存在している。どのバージョンも、詩人ホフマンが3つの失われた恋を振り返るという基本ストーリーは変わらないが、オッフェンバック自身が命名した「幻想オペラ」(Opera fantastique)という要素がクリエイターの想像力を掻き立てるのか、物語の順番や音楽が異なるさまざまな『ホフマン物語』が上演されている。

 

 英国ロイヤル・バレエ&オペラ in シネマ2024/25『ホフマン物語』では、挑発的な読み替えで常に論争を巻き起こすイタリアの演出家ダミアーノ・ミキエレットによるポップで奇抜、ちょっとダークな幻想的ステージが見どころだ。

 クリエイティブチームをオールイタリア人で固め(セットデザイン:パオロ・ファンティン、衣装:カルラ・テーティ、照明:アレッサンドロ・カルレッティ、振付:キアーラ・ヴェッキ)、バレエあり、サーカスあり、そのユーモアと遊び心は、まるでイタリアの映画監督フェデリコ・フェリーニの映画のよう。

 人生にも詩作にも幻滅している初老の詩人ホフマンは、ニュルンベルクの居酒屋ルーサー・タバーンで、詩のミューズの導きにより、パリの少年時代(オランピアへの恋)、ミュンヘンの青年時代(アントニアとの恋)、大人になったヴェネツィア(ジュリエッタとの恋)という若き日の恋した時代を旅することで、これからの詩作人生に新たな希望を見出す。このようなドラマ展開も人間賛歌を謳うフェリーニ的だ。観る人それぞれが何かしらの想いを抱く『ホフマン物語』である。

 ちなみに、筆者がミキエレット演出に初めて接したのは、2010年ロッシーニ・オペラ・フェスティバルを取材した『シジスモンド』だ。舞台を本来のポーランド王宮から精神病院に読み替え、その大胆な演出に対してカーテンコールでは激しいブーイングが飛び交った。彼は当時のインタビューで、「ロッシーニのオペラは、例えば愛の場面でもはっきりと愛を表現している音楽になっていないところに、演出のイメージがふくらむのです」と語っていた。音楽から発想を得て、今となっては古臭いかもしれないオペラの物語を、現代の私たちに違和感なく観てもらうための読み替え演出。それがミキエレットの世界的な人気の理由なのだろう。

 

 国際色豊かな旬の歌手のパフォーマンスを、映画館の迫力のスクリーンと音響空間で堪能できるのも、英国ロイヤル・バレエ&オペラの醍醐味のひとつである。

 主人公ホフマンを歌うのは、ペルー出身の世界的スーパーテノール、ファン・ディエゴ・フローレスだ。51歳の彼は少年から若者、青年、老人までを演じ切る。ホフマンの“宿敵”であるリンドルフ、コッペリウス、ミラクル博士、ダペルトゥットの4役には、イタリアの人気バスバリトン、アレックス・エスポージト。オランピアは、本公演でロイヤル・オペラ・ハウスデビューを飾ったロシアの新進ソプラノ、オルガ・プドヴァ。アントニアは、2023年パレルモ・マッシモ劇場来日公演『椿姫』のヴィオレッタが記憶にも新しいアルバニア出身のソプラノ、エルモネラ・ヤオ。ジュリエッタを演じるのは、今年10月に新国立劇場2025/26シーズン開幕公演『ラ・ボエーム』でミミを歌うイタリア系アメリカ人ソプラノ、マリーナ・コスタ=ジャクソン。彼女とニクラウスを演じるフランス系カナダ人のメゾソプラノ、ジュリー・ブリアンヌが、第3幕冒頭に「ホフマンの舟歌」を歌う。

 

 指揮は、故クラウディオ・アバドの片腕としてマーラー・チェンバー・オーケストラやルツェルン祝祭管弦楽団のコンサートマスターを務めた後、指揮者に転向したイタリア出身のアントネッロ・マナコルダ。室内オーケストラ「カンマーアカデミー・ポツダム」の首席指揮者で、今年2月にパリ・オペラ座の新制作であるドビュッシーの歌劇『ペレアスとメリザンド』を指揮し、8月にはドニゼッティの歌劇『マリア・ストゥアルダ』でザルツブルク音楽祭にデビュー予定。まさに「いつ観るか?今でしょ!」の指揮者の一人だ。