ロイヤル・オペラ

アイーダ

Aida

  • 【音楽】ジュゼッペ・ヴェルディ
  • 【台本】アントニオ・ギスランツォーニ(オーギュスト・マリエットのシナリオを元に)
  • 【指揮】アントニオ・パッパーノ
  • 【演出】ロバート・カーセン
  • 【美術】ミリアム・ブーター
  • 【衣裳】アンマリー・ウッズ
  • 【照明】ロバート・カーセン、ペーター・ファン・プラート
  • 【振付】レベッカ・ハウエル
  • 【映像デザイン】ダンカン・マクリーン
  • ロイヤル・オペラ合唱団(合唱指揮:ウィリアム・スポールディング)
  • 【出演】アイーダ:エレナ・スティヒナ
    ラダメス: フランチェスコ・メーリ
    アムネリス:アグニエツカ・レーリス
    アモナズロ:リュドヴィク・テジエ
    ランフィス:ソロマン・ハワード
    エジプト王:シム・インスン
    伝令:アンドレス・プレスノ
    巫女(舞台裏の声):フランチェスカ・チェジナ
  • 【上映時間】3時間34分

ヴェルディの『アイーダ』が現代の社会を映す鏡になる!
英国ロイヤルが新演出で描く、軍事国家の危険と戦争の犠牲となる男女の悲劇―。

オペラの人気演目「アイーダ」は、古代エジプトを舞台に、エチオピア人奴隷のアイーダがエジプト軍の将軍ラダメスへの愛と祖国の間で引き裂かれる悲劇。19世紀イタリアの巨匠ヴェルディのスペクタクル・オペラとして、エキゾチックな舞台と大規模な合唱やバレエのシーンで良く知られている。

だが2022年、英国ロイヤル・オペラが発表した「アイーダ」新演出版で巨匠ロバート・カーセンが創りあげたのは、古代エジプトとエチオピアという設定を完全に排除した物語だった。現代のいくつかの国の要素を取り入れて考案したという架空の国家が舞台となり、軍事力に頼る全体主義が個人の幸福を左右する様を、カーセンらしい完成度の高い筆致で描き出す。国家元首(エジプト王)とその娘(アムネリス)はブランドの服に身を固め、軍隊の揃った敬礼を満足そうに受ける。鳴り響くトランペットが軍隊の入場を告げて始まる<凱旋の場>では、戦死した兵士たちを悼む儀式や、軍のデモンストレーションを表現するダンスが演じられる。人間社会のあやうさと、愛し合う男女の苦悩は、時代と国を超えて観客に迫ってくる。

音楽面での充実も演出に負けていない。音楽監督パッパーノの指揮は、華々しいシーンは堂々たる演奏で、主人公たちの対話は細かい心理を感情豊かに歌わせる。主役歌手たちも超一流の布陣。タイトル役アイーダのエレナ・スティヒナ、ラダメスのフランチェスコ・メーリ、アムネリスのアグニエツカ・レーリス、アモナズロのリュドヴィク・テジエ、そして注目のバス歌手ソロマン・ハワードまで、世界で活躍する国籍も様々な歌手が顔を揃えた。英国ロイヤルが誇る合唱団は<凱旋の場>を始めとするシーンでスリリングな歌を聴かせる。あらゆる意味で『今』を感じさせる舞台だと言える。終演後の観客のブラボーの声は盛大で、イギリスのオペラ・レビューでも高い評価を得、今後も受け継がれていくであろうプロダクションとなった。

【STORY】
舞台は古代エジプト(この演出版では現代の架空の国)。エチオピアへの出陣を前にして将軍に選ばれたラダメスは、祖国に勝利をもたらすことができれば愛するアイーダ(奴隷の身だが実はエチオピア王女)と結ばれる夢がかなうと期待に胸を膨らませる。だが王女アムネリスもラダメスを愛しており、彼とアイーダの仲を疑っていた。勝利したエジプト軍が凱旋すると、捕虜の中にはアイーダの父アモナズロが。アイーダは父の命令でラダメスから密かにエジプト軍の情報を得るが、それが発覚しラダメスは逮捕され、死刑の判決が下される…。