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2018.02.08

美術設定・コンセプトデザイン 岡田有章 インタビュー

――企画の第一印象を教えてください。
岡田 岡田(麿里)さんが監督と聞いて、監督としては初めてだけれど、脚本は間違いない、と思いました。これはいい仕事を振ってもらったな、と(笑)。自分はファンタジーも大好きですから、そこも全然問題ありませんでした。
――世界観についてはどんなオーダーがありましたか。
岡田 作業はマキアが生まれ育ったイオルフから始めました。岡田監督は「世界から孤立したような場所」というイメージは持っていたけれど、それを映像でどう表現するかについては、まだ迷っていたようでした。どんなルックがよいか何点かこちらからアイデアを出して、その返事を待ちつつ、王宮のあるメザーテと鉄鋼の街のドレイルの設定にも手を付けました。メザーテは最初に2種類アイデアを出したんですが、ひとつがちょっとドレイルとかぶりそうなゴツい雰囲気だったんです。なので、メザーテはよりゴシックな雰囲気を強調し、尖塔を立てたり、オーナメントで装飾過多に見えるように描きました。逆にドレイルは、もっとゴツゴツした雰囲気でまとめていきました。
――最終的に出来上がったイオルフはとても神秘的な雰囲気です。
岡田 石灰岩を長い時間をかけて削って、いろいろな建物を作ったというイメージです。イオルフは長命なので、きっとコツコツと削って自分たちの居住地を作り上げたのだろうと自分なりに想像して描きました。工業製品で作った建物ではないので、いろいろなところが曲線でできています。
――マキアとエリアルが暮らすヘルム農場なども曲線が多いデザインです。
岡田 ヘルム農場は、アールヌーボーのような曲線のデザインをヒントに、もっと自然に近づけて描きました。植林した樹木の幹を柱に、枝を梁にしているイメージです、農場などの建物は傾いでいたりするので、設定を描いていると、どうもパースが間違っているような気がして、知らず知らずのうちに修正していまうんですよ。そこは苦労しました。
――どの美術設定も情報量が多いですが、映画ということを意識されたのでしょうか。
岡田 映画というのもありますが、ちゃんと意味のある情報量にしたいなとは思いました。たとえばメザーテのオーナメントなどは、あの国がすごく豊かな国であったということを意味しているわけです。背景の情報量は、そういうことを通じて、感動のボリューム感の裏打ちをするものだと考えています。この映画の感動が一層増す役割が果たせればよいのですが。

おかだ・ともあき/主な作品に『鋼の錬金術師 嘆きの丘の聖なる星』(美術コンセプトデザイン・美術監督)、『クロムクロ』(ビジュアルコンセプト・メカデザイン)、『ガンダム Gのレコンギスタ』(美術監督)などがある。