公式サイト
TOPへ

2018.02.05

美術監督 東地和生 インタビュー

――『さよならの朝に約束の花をかざろう』という作品の第一印象を教えてください。
東地 正直言うと「マジッすか」という感じでした(笑)。そもそも今回は企画内容を知る前に、岡田(麿里)さんからオファーをいただきまして、「岡田さんがやるんだったら」ということでお引き受けしたんですよ。現代劇かと思い込んでいて、後になって内容を聞いたんです。そうしたら「ガチのファンタジーです」というので、そこで「マジか」と思ったんです(笑)。
――どうして「マジか」と思ったんでしょうか。
東地 覚えているんですけれど、岡田監督に「ほら、私たちの世代だと『ドラクエ』とかのゲームでファンタジー好きだったじゃない」って言われたんですよ。でも僕は「いやそのへん、一通りやってはいたけど描くのは……」と思っていて。あと僕の考え方として、現代もののほうがずっとお客さんの共感を呼びやすいだろうというのもありました。学校の教室が出てきたり、帰り道の自動販売機が出てきたり、そういうことでお客さんは、その空気を思い出してくれるんですよね。でもファンタジーはそういう接点がありませんからね。えらいものを引き受けてしまったと思いました。さらに、しばらくの間、主人公のマキアというキャラクターがどうにも掴めなかった。岡田監督に面と向かって、マキアのどこがわからないのか列挙したこともありました。だからしばらくは筆が重かったです。
――何か転機は訪れたんでしょうか。
東地 いくつかきっかけがあるとしたら、ひとつは読み合わせを見学させてもらった時です。読み合わせでは、主なキャストさんが集まって、脚本を頭から通して2時間かけて演じました。岡田監督から「東地さんも見ておいて」といわれて参加したんですが、まずキャストさんたちのテンションが高いことに圧倒されました。そして、終わった時はみんな泣いているんです。しかも終わった後、1時間近く、皆さんでこの作品について語っているんです。それを見て「この作品はすごいのかもしれない」と思いました。その時、岡田監督に「いろいろ文句を言ってすみませんでした」と言った記憶があります。もうひとつはもう少し後になってからですが、岡田監督にまたマキアについてあれこれ疑問を投げかけていた時です。岡田監督の「マキアだってつらいんだよ」という言葉に、自分がエリアル視点でこの物語を見ていたことに気づいて、そこでまた作品の捉え方が大きくかわりました。
――――作品に参加した感想を教えてください。
東地 美術については、これまでの自分はピアノでいうなら、88鍵のうち半分ぐらいでしか表現していなかったのを、全て鍵盤を使って表現してほしいと、岡田監督に求められた作品でした。これまで以上に岡田監督という熱源に接近し、そこで焼かれながら仕事をしたという感じですし、それだけの作品になったと思っています。

ひがしじ・かずき/主な参加作品に『AngelBeats!』、『花咲くいろは』、『TARI TARI』、『凪のあすから』(いずれも美術監督)などがある。